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恋は諸行無常。

音楽、ナンパ、思想

電通過労自殺に思うこと。

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『人間の命を何だって思っていやがるんだ』

『人間の命?』

『お前達をどだい人間だなんて思っていないよ』

  蟹工船/小林多喜二

 

ある平凡な自殺志願者の1日。

 

『何回同じミスを繰り返すの?原因と具体的な対策を書き出して今日中に説明して』

 

 

本当に申し訳ありませんでした。すぐやります。

 

 

『本当にお前がいるとリカバリーが大変なんだよ。他の仕事先探したら?』

 

 

本当にすみませんでした。でも辞めたら多分どこも雇ってくれないので…

 

 

『努力が足りないんだよ』

 

 

そうかもしれない。毎朝最悪な気持ちになるのも、上司とうまくやれないのも、やってもやっても仕事が片付かないことも、全部自分の頑張りが足りないことが原因なのかもしれない。

 

 

『被害者だと思ってる?お前は沢山の人に迷惑しかかけられない加害者だよ』

 

 

そうだ。私は加害者だ。辛そうな顔して優しい言葉を期待している私よ消え失せろ。

 

 

『君の残業時間の20時間は会社にとって無駄だから』

 

……

 

 

 

涙が止まらない。

 

 

 

日が沈んでも誰も帰らない。張り詰めた空気で胃が痛くなる。

 

相変わらず鳴り止まない電話。フォローの電話だろうが吐き気で人と話す気が起こらない。

電話が終わるとやろうと思っていたことを全て忘れてしまう。書類はいくら探しても見つからない。相談したいことも山ほどあるけど、上司が怖くて聞けない。

 

先輩社員がこのクソ長時間労働の中楽しそうに談笑している。もう本当に訳がわからない。何故この状況で笑えるんだ。私がやる気ないだけか。

 

何も終わらせることが出来ていないのに時間だけが嘘みたいに過ぎていく。自分でも何故ここまで仕事が遅いのか理解出来ない。

 

 

 

自分がここまで馬鹿だとは思わなかった。

 

 

 

一流大学を卒業し、一流企業に入ったのが人生のピークだった。

 

今はもう、この場で呼吸していることすら申し訳ない。

 

一秒一秒生きていることが辛い。

 

 

 

裏口から会社を出て、とぼとぼ帰る。

 

犯罪者になった気分だ。堂々と道を歩くことが申し訳ない。

 

道行く人にぶつかって舌打ちされる。私はゴミだから仕方ない。

 

 

こんなはずじゃなかった。

 

 

優秀な人たちに囲まれて切磋琢磨して、輝かしい実績を出して、故郷の母の自慢の娘になるはずだった。今のままではダメだ。もっともっと頑張らないといけない。

 

 

 

泣けてくる。

 

 

 

携帯を見ると山ほどフォローの連絡が届いている。またミスをしてしまったようだ。

 

 

 

頭が狂いそうになる。

 

 

 

何でこんな簡単なことも出来ないんだろう。

 

 

 

もう限界だというレベルを明らかに超えているが、弱音を吐いた瞬間自分を罵倒する上司の顔がありありと脳裏に浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

もう生きていけない。

 

 

 

 

 

 

 

お母さんごめんなさい。

 

 

 

 

 

終われない物語。

過労によるうつ病自殺。東大卒電通入社のエリート。前途有望な若者の死。

 

『死ぬ前にやめろよ。』

 

必ずこう言う人がいますがナンセンスです。幼い頃から両親から莫大な投資をしてもらい、その期待を一心に受け、熾烈な競争を突破してエリートの塔の最上階を目指してきた人間にとって、このレースから降りることは自分のこれまでの人生を否定することで、この選択をすることはほぼ不可能です。

 

エリート街道を脱落するときは死ぬとき。

 

こういう世界で生きている人たちがいます。

 

仕事はやってみないとわからない。

働くということが難しいのは、特に日本の文系学部の場合、大学で勉強してきたことと全く関係のない、仕事に就くことがほとんどなので、究極的にその仕事が向いているかはやってみないとわからない点です。

 

ハードな再就職。正社員至上主義。

このため一番苦労をするのが、自分にミスマッチな一流企業に入社してしまった学歴エリートです。今まで多くの犠牲の払ってやっとの思いで入ることが出来た会社。だけどどうしても自分と合わず、仕事が全く出来ない。気づけば上司に罵倒される毎日。

 

受験戦争、就活戦争である程度のストレス耐性があるので、我慢して我慢して我慢する。がそれが災いし、やがて精神が崩壊し正常な判断力を失う。

 

書類の山、未読メール、催促の電話の嵐。

 

ここで不幸なのは、そうだ!転職しよう!と簡単にできない点です。

 

実務経験がものをいう転職市場でそれが皆無の人間に有望な転職先はありません。まして正社員になりたいと思った時には最低5年の経験は必要になるでしょう。

 

だから自分に向いていない仕事を続けるしかない。心は壊れていくけれど、退職しようものなら、現状よりいい会社への再就職はほぼ不可能。今まで苦労して頑張ってきたのが全て水の泡。

 

自殺。

 

このループから抜け出すには死ぬしかない。そう考えても不思議じゃない。

 

じゃあどうすればいいのか

採用時に企業は会社の実態を包み隠さず話す。

電通は世間体はいいが、超絶ブラック企業であることはこれまでも周知の事実でした。だけれど就活をするとどうしても難関企業に入りたくなってしまうのがエリートの性。

 

別に長時間労働を否定はしません。avexの松浦さんみたいに仕事のためなら睡眠時間をいくら削ったって主体的に鬼のように仕事をして、それが生きがいである人もいます。企業はそう言ったモーレツのフィロソイーがあるならばそのことを必ず明示してそうでない人を雇わないように努める責任があると思います。