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恋は諸行無常。

音楽、ナンパ、思想

高畑淳子の涙とシシューポスの岩とカミュ

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汚れた世界に 悲しみは響いてない

どこかに通り過ぎてく ただそれを待つだけ

Swallowtail Butterfly~あいのうた~/chara

 

往年の大女優が涙を流して首を垂れていた。

髪は乱れ、暴力的なまでのカメラのフラッシュが肩を

落とす彼女を残酷に照らす。

無表情に質問を投げかける記者達。

途方もなく長い時間に感じられたかもしれない。

 

『不謹慎かと思いますがどんなことがあっても私は息子の母親です。

 申し訳ありません。』

 

舞台女優から徐々に頭角を現し30代後半でようやく認知され

紫綬褒章天皇陛下から授与されるまでに至った大女優。

それまでの道のりは簡単なものではなかっただろう。

 

息子がしたことは当然許されることではないけれど、

その母は加害者とまで言えるのだろうか。

 

母と子は一蓮托生で、息子が地獄に行ってもその手

を離さないのが母だと思うけれど、身を粉にして

働いてきた彼女が何故こんな悲しい運命

と戦わなければいけないんだろうと

思うと胸が苦しくなる。

 

不条理としか言いようがない。

 

神様はいつだって僕達を弄ぶ。

 

何故こんな悲しい試練を与える?

 

後に神となったキリストは多くの民衆を救済したにも

関わらず磔にされ殺された。

 

仏教では一切皆苦と言ってこの世の全ては苦行であり、

来世の為の修行であるとまで言っている。

 

神を欺いたシシューポスは逆鱗を買い、大きな岩を山頂まで押して運ぶという罰を受けた。しかし山頂に到着した瞬間岩は転がり落ちてしまう。シシューポスは永遠に終わらない苦行を繰り返すこととなった。

 

アルジェに暮らすムルソーは母を亡くしても無感情にそれまでと変わらない生活を続けた。トラブルに巻き込まれて相手を銃殺してしまい、裁判で殺人の動機を尋ねられ『太陽のせいだ』と答えた。

 

フランスの文豪カミュは不条理について以下のように述べている。

「不条理から3つの結果を得た。反抗と自由と情熱だ。

私は自分の意志で人生に待ち構える死を受け入れ、自殺を拒絶した」

 

wikiから抜粋。

カミュは不条理が受け入れることができるものであるとした。理由は、人生の意味が不条理を超えたところにあるからである。

 

もし不条理に気づくことができれば、この世界が意味を持たないことに気づく。ということは個としての我々は真に自由であり、世界を客観的ではなく主観的に捉えることができるとした。個々が意味を探し求めて自分なりの解釈を得ていくことで幸せになれるのである。

 

究極的にはこの世界に意味などなく、善行を重ねようが、人を殺そうが幸福、地獄はランダムに訪れるし因果律なんてない。

 

そのことを根底で理解していれば、人生の意味なんて自分に都合よく決めてしまっていい、そしてそれは不条理を乗り越えることだとカミュは言っている。

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